Q3. 退職金に対する源泉徴収
退職金に対する源泉徴収は?
役員および使用人に退職金を支払う際、所得税を源泉徴収し、原則として、翌月10日までに納めなければなりません。この退職金には、退職した際に支払われるすべてのものが含まれますので、退職手当・功労金なども退職金に含めねばなりません。(ただし、死亡退職により支払う退職手当等で相続税の課税の対象となるものは、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収は必要ありません)
では、退職金に対する源泉徴収とは?
それは「1.退職取得の受給に関する申告書の提出を受けている場合」と「2.受けていない場合」で異なります。
(注1)地方税の特別徴収も要しますが、ここでは国税(所得税)のみ説明します。
1.申告書の提出を受けている場合
- 退職する人の勤続年数を計算します。
勤続年数の期間は、原則として、退職金の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間を指し、長期の欠勤や病気での休職の期間も、勤続年数に含み、勤続年数の期間に1年に満たない端数がある場合は、切り上げて1年とみなします。 - 1 で計算した勤続年数に応じて、次の表により退職所得控除額を計算します。
[退職所得控除額の計算の表]勤続年数 退職所得控除額 20年以下 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円) 20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 -20年) (注2)障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、
上記の方法により計算した額に、100万円を加えた金額です。 - 退職金の支給額から 2 で計算した退職所得控除額を差し引き、2分の1(1,000円未満の端数は切り捨て)にします。ただし、役員等としての勤続年数が5年以下のものが、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものについては、この2分の1にするという措置はありません。
- 3 の金額に所得税の税率を乗じて計算した額(100円未満の端数は切り捨て)が、源泉徴収する税額になります。
《例1》
退職金の支給額が800万円、勤続年数が10年2か月の人の場合
①勤続年数は、11年になります。(1年未満の端数は1年に切上げ)
②退職所得控除額
40万円×①の勤続年数
=40万円×11年
=440万円
③課税退職所得金額
(退職金の支給額-②)×1/2
=(800万円-440万円)×1/2
=180万円
④ 税額
③×所得税の税率=180万円×5%=9万円
(復興税)9万円×2.1%=1,890
この場合の源泉徴収税額は、91,890円になります。
《例2》
退職金の支給額が2,300万円、勤続年数が29年2か月の人の場合
①勤続年数は、30年になります。(1年未満の端数は、1年に切上げ)
②退職所得控除額
800万円+70万円×(①の勤続年数-20年)
=800万円+70万円×10年
=1,500万円
③課税退職所得金額
(退職金の支給額-②)×1/2
=(2,300万円-1,500万円)×1/2
=400万円
④ 税額
③×所得税の税率
=400万円×20%-427,500円
=372,500円
(復興税)372,500円×2.1%=7,822円
この場合の源泉徴収税額は、380,322円になります。
2.申告書の提出を受けていない場合
退職金の支給額(退職所得控除額の控除前の金額)に20%の税率を乗じて計算した所得税を源泉徴収します。この場合、退職金の受給者本人が確定申告をして、1と同様の計算を行い精算することになります。
《例3》
退職金の支給額が800万円の場合
退職金の支給額×20%=800万円×20%=160万円
(復興税)160万円×2.1%=33,600円
この場合の源泉徴収する所得税の額は1,633,600円になります。
(注3)支払者が管轄の税務署長の承認を受けている場合には、「退職所得の受給に関する申告書」は電磁的方法により提供することができます。
(通法118、119、通令40、所法9、30、120、198、199、201、203、所令69、所基通9-17、30-7)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm から引用